彫刻のように整った唇が苦しそうに歪み、こういった。
「アクエリアスが倒された。それからキグナスも重態だ。」
Phantom Pain
カノンからそう聞いた瞬間。
嘘だ。と猛烈な吐き気がこみ上げた。同時にもう感覚の無い筈の左目の傷跡がずきりと痛む。
聖域で尋常ではない事が起こっている事ぐらい、海の底にもいる俺たちにも隠しようも無い程に解っていた。あの二人の小宇宙も追えなくなり、俺は気にかけてはいたのだ。
今すぐにでもここから出たいと焦る気持ちを押さえ込んで。
だからって。そんなことって。
感じていた不安が現実であると伝えられた瞬間、膝が震えてしゃがみこみそうになる。
続けて、蒼白な顔色をしたカノンの口から吐き出す様に言葉が漏れた。
「...双子座も墜ちた。」
言ったとたんにカノンは俺の前でどさりと倒れ込んだ。まるで自分も同時に呼吸が止まったかの様に。
そして数秒かがんでいた彼は。地面に膝をつき、背をかがめ、大地に伏して狂った様に泣きはじめた。
号泣とはこういう事をいうのだろうか、腹の底から周囲を憚る事も無く叫ぶように涙を流す男。
俺はカノンのような大人が泣くところなんて見たことも無く、今聞いた言葉の内容すら把握しきれずにどうしようもなく半ば呆然としていた。
だが、まるで霞がかかったかの様な眼前で、嗚咽を繰り返しながら、俺に縋ってもたれ掛かる年上の男の腕の熱さだけが現実感を伴って熱く。重く。
気がつくと。その躯を抱きしめ。声を立てずに肩を震わせて一緒に泣いていた。