Comment était ce rêve ?




 彼の愛撫は精緻で丁寧だ。そうかと思うと嵐のように激しく私を翻弄する。深く物事を探求する蠍座の男との性行為は、まるで彼の技を受けているようだ。最後に待つのは発狂か死? ああ、もう覚悟は出来ている、望むところだ。

 窓は二人の汗で普段以上に曇っている、氷点下の地でここはなんという暑く蒸した部屋だ、吐息は朝には結露になろう。こんな事を考えてしまうのも、このまま身を任せていたら、あっという間に達してしまいそうだからだ。

 快楽と共に饗される愛情のアルコール度数はいくつなのだろう、彼だけが私を昂らせる。まるで強い酒に酔わされ力が抜けてしまったように。どうしても閉じることができない私の脚の間で、敏感な切っ先を弄る指と口から、湿った水音と獣のような息遣いが聴こえた。

 蛇のように自身を絡め取る彼の舌で、私の大腿部に細かな痙攣が広がっていく。

「ん…ああっ。」

 思わず漏れてしまった声が聴こえやしないかと、そっと脚の間を見下ろしてみる。 快感を悟られるのはちいさな屈辱だ。まるで、お前への執心と負けを認めたようではないか。だが、躯はあまりにも正直にその愛撫を欲しがり、狂おしい程に放出の瞬間を求めている。

 躯だけの関係ではない、と想いたい。だがなにか熱いものが芯のから湧いてきて、急にミロの全てが欲しくて、堪らなくなって。もっと蕩かしてほしくて、焦れったくなって。邪魔なほどに豪奢な髪をかき抱き、彼の頭を思い切り抱きしめた。


 だが、どうしたことだろう。その重量は急に重みを増し、私に絡まる舌がゆっくりと止まり、急に水音が静かになった。


 どうした?と、そっと様子を伺うと。上下の瞼は合わさり、胸郭は規則的な呼吸に上下し、上半身はしずかにずれ落ちかかっている。

 覗いた顔はまるで安心した子供のよう。ふさふさとした金色の睫毛が揺れている様を見つめていると、行為の途中で寝てしまった彼を、怒る気持ちは不思議に湧かなかった


 なにがあった? そのように疲労して。私にさえそれと気づかれないように振る舞って。莫迦ものが。

 私は一人ふっと笑って、何も告げずに彼が負ったであろう苛酷な任務を想う。そういえば彼らしくないすこしこけた頬、無防備に寄りかかる躯はいつもより愛しく想えて。絡まる金髪を撫でながら、大変だったのだな、と心の中で声をかけた。


 だが、まさかこの姿勢のままではいられない。

 すこしだけ頭を垂れた自身の陰茎を彼の口から出さんとし、ずるりと引き抜く、その瞬間、彼の奇麗に整った歯と味蕾が粘膜の敏感な部分にざらりとあたり、その刺激で私は、あ、とちいさな声をあげて達してしまった。私もかなりお前との行為に溺れてしまっているな。と、己の業に苦笑する。

 

 さて、私の蠍座よ。お前は明日いったいどんな顔をして起きてくるのだろうか。すまなそうにカフェ・オ・レでも作って?それとも最後まで自堕落な昨日の続きを?

 私はそれまで寝た振りでもしていよう。起きたらどんな顔をしてやろうか、仏頂面がいいだろうか。それとも、愛情などおくびにも出さずに今度は私から誘惑して襲ってしまおうか。


 お前は今、どんな夢をみている?


 絡まった髪に思うさま顔をうずめ、彼の匂いをかいだ。ただこれだけで、何故こんなにも安心するのだろうか。そして私も贅沢な眠りにおちていく。









back


2013/5/15