Le coffret Tentation
痛い程にじりじりと刺すギリシャの太陽が、バスローブがはだけた背中に突き刺さり、もう目覚めろと急かしている。
ふあ、と。ひさびさに大きな伸びをした。ここのところ浅い眠りばかりを繰り返し、久しぶりに安心して熟睡していたものだから、ずいぶんと日が高くなるまで気がつかなかったな。
幸福な眠りの源は、横に眠る柔らかな躯。
小さな寝息が俺の頬にかかっていた。しばらく無くて、どうしても落ち着かなかったその感触。心地よく重みを感じる腕の上に、いつもの姿勢で寄りかかり、白い頬を乗せる横顔と、閉じられた長い睫毛に縁どられた深い影。陽光にすけてきらきらと輝く赤い髪が散らばっている。そこには着崩れた制服のまますやすやと眠る女子高生。もとい、カミュが居た。
おれは口元がゆるみそうになるのを必死の想いで堪えながら。ゆっくりと長い髪を撫で、梳いていく。
---ううっ、やばい!可愛い!
というか、18歳の黄金聖闘士と同衾だと?しかも制服。これはまずいのではないだろうか。さらにここは聖域だ。どれだけ不純異性交遊なのだろうかっ!ううっ、背徳的すぎ…だが、いい!おれはどんな罰でも甘んじて受けよう。
俺は感激の涙で霞む目尻を抑え、己の幸福にしみじみと浸った。…えー、ちなみに。もし罰を受けるのならばもう一回ぐらい愛を交わしてからでもいいでしょうか女神よ。
さて、もう前作と同じで済まないが、一応解説をしておこう。
多少強引な展開と作者の趣味により、女神の御加護によって聖戦後の命を得た俺たちだったが、神々の悪戯かはたまた気まぐれか、そのうちの幾人かは女だった。そして、なんとカミュも。
そして、自慢じゃないがカミュのスペックは凄かった。18歳絶頂の肉体に身長174cm。体重59kg。スリーサイズは 80 - 61 – 86。スーパーモデル並みだな。うむ。
初めて逢った瞬間はまさに鼻血ものであった…実際垂らしたら白い目でみられていたところだ、あれは危なかった。
『カミュ18歳、絶頂の肉体』などと、そのまま写真集のオビに出来てしまうキャッチだろう!
肌だって静脈が透き通るくらい白くてつるりとしていて、今まで着ていた男物のシャツはぶかぶかでちょっとでた紅い爪が可愛くて。すらっとした足など、ニーハイブーツにピンヒールで踏まれたいぐらいの凄い美脚!で、あの冷たい目つきですよ。うう、たまらん。
ツン(デレ?)最強美女キャラとは、なんというご褒美を女神は下されたのだ!
このミロ、全力で友人としての義務を…いや、それ以上の関係を全う致します。そう心に決めた。
だが、どのように可愛く生まれ変わっても、何故か女性としては悩むらしく、カミュは『私には胸が無い』といって、もの凄い気にして自信喪失していたのだ。たしかにカミュはつるんぺたんだった、Aカップ以下だった、ブラジャー店でも「お取り寄せしかありません」と云われた…えー、まあそのぐらいにしておこう。それは事実だ。だがそのようなこと、俺には関係ない。
だから俺は気が遠くなる程頑張った。たぶん数ヶ月以上、なにもしていない、禁欲生活だ、この俺がだ!ありえん。だが、もう一度恋人の関係に戻りたくて、キスでさえ無理強いはせず、とにかく紳士的な態度で尽くして尽くして尽くしまくってきたんだ。
しかし、女神はじめ、E、Fカップが基準の聖域では、いかにアクエリアスのカミュと言っても白銀聖闘士にさえ負けるバスト。どうも引け目を感じるらしく。女性用の服を着るどころか、昨日まで指一本触れさせてくれなかったんだな、これが。
だが、ここからが本題だ。聞いてくれ。そんなアイツがようやっと俺の腕の中に戻ってきてくれたのだ!
誕生日の真夜中。天蠍宮にいきなりやってきた人影は宣戦布告を告げた。某美少女戦士よろしく、制服にニーソックス、そしておろしたての下着でこんな台詞を云いながら。
「ミロ、これは勝負だ、受けるがよい!」
膝上のプリーツスカートはためく制服、その下から覗く真っ白なショーツ。なんとなくその時点で既に負けを感じながら、おれは当然の事ながらその戦線布告を受けて勃った…いや、立った。どうもカミュの出した結論では恋愛とは男女の聖戦であり、そのための『勝負下着』というものが存在するということらしいが、要するに『プレゼントは私』ってことだろう?これって男の夢だよな!え?楽観的すぎかな、俺。
まあ、昨晩はお互いはじめての経験なので、あまり上手くはいかなかったのだが。初陣とはこんなものだろう。同じベッドで眠る恋人。これを幸せといわずしてなんといおうか。
ふと、不安に駆られた。今、横にいるカミュは、まさか禁欲しすぎた幻覚じゃないだろうな。確かめようと、昨日薄暗いところではよくわからなかったシャツを、ちらりとめくり、覗いたブラジャーのレースの下には、まさに控えめな乳首トーンの色合いの薄桃色が存在していた。なにい、微乳の美乳だと?!そして、ニーソックスがすこし乱れたスレンダーな脚がタータンチェックのスカートから覗く。なんという清楚と淫糜の間なのだ。まさに必殺技と言って云い。おれは制服の威力に感激した。
いやほんと、これまじで美少女ゲーの夢オチとかだったら俺は切れますよ、本気ですよ。コキュートス目覚めファイト一発スカニー15発一気撃ちどころじゃないですよ?
あまりの幸福は人間を猜疑に陥らせるらしい、再度疑って、つねってみた頬は痛かったし、焦ってこぼしたコーヒーは熱かった。本物だ…!
俺は感動のあまり、本編でもした事の無い車田泣きをしてしまった、ああ、このことは御大には内緒にしていてくれ。
しかも、噂によると乳というものは揉んだら育つというではないか。そこで俺は女神を思い浮かべる。ああ、あなたも実は秘めたる恋人がいるのでしょうか。
その時の俺はもう世界中に向かってサガポー!とか、ジュテーム!とか叫び、海岸に向かって松岡修造とダッシュしたくなるぐらい舞い上がっていたから、アテナが処女神だとすっかり忘れていて。『どなたと付き合っても貴女様にしたがいます。乳は正義です。どんな乳でも正義です!』と、アテナの豊満な胸に誓いを立てた。そこではっと気づいて俺は自分の不敬を呪った。女神は処女神だよな!そうだよなあ!(いや、だがあの巨乳にはやや疑問が残る俺なのであった…。口がさけても言えないが。)
だが、ありがとうございます女神よ。あの微乳をカミュに授けて下さったその意味、このスコーピオンのミロには解るのです。これから揉んで育ててもいいという思し召しなのですね。
「人はやりなおせるものなのだな・・・」
俺はばっちりキメ顔でそういってから、ふとおもう。
そういえば、昨日は夢中だったけれど、こいつはちゃんと満足してくれたのだろうか?
すこしばかり不安になって、乱れたチェックのスカートをそっとまくった。ああ!憧れのスカートめくりが出来るとは!しかも女子高生の格好をした恋人にだぞ? その瞬間の俺はもういちど世界中に向かってガッツポーズと投げキッスをしたい気分で一杯だった。
めくったプリーツスカートの下からは、眩しいほどに真っ白なレースのショーツが現れる、何度見ても感動のスカートめくりのこの瞬間。お前は中学生男子か!?と云われてもいい。その通りだ、男は永遠の中二病だ。『スコーピオンのミロ』を返上して『中二病のミロ』と呼ばれてもいい。ふ、よかろう。この至福に比べたら呼称などどうでもいい。
だがスカートめくりにはなぜか背徳的な気分が漂う、ばくばくと鳴る心臓。これは恋人の特権だ、犯罪ではない、大丈夫だ。制服は着ているし18歳だが、れっきとした黄金聖闘士。女子高生じゃない。と、自分に言い聞かせながらも、しどけない寝姿にちょっとだけいたずら心が働いて、ショーツの上からそっと茂みを撫でてみると、カミュはまだ柔らかな夢を漂っているらしく、ん…ふ…なんて妙に可愛い声を出し、けだるい寝返りをうつ。
が、次の瞬間悪夢が起きた。
カミュが突然起き上がって「何をしている!」と言うなり、俺は宙を飛んでいた。その瞬間をコマ送りのように感じながら、ジャーマンスープレックスが決まる。
今までの関係なら避けるところなのだが、余りにも久々すぎて、脳天からまともに食らってしまった。おれはくらくらする頭で思う。スプリングベッドの上で良かった…。いや、こいつは起きていない、というか半分しか起きていない、これは寝ぼけたカミュの通常状態だったのだ。わすれていた。平和ボケとは恐ろしい。
まさに蠍の体勢にされた俺は「ギブギブ!ギブギブ!」と叫びながら、半泣きで、何をしたっていうんだよ、と我ながら情けない声を出す。するとカミュは「せっかくのショーツをそんなふうに触っては…また、昨夜のようになってしまうではないか」などと顔を赤らめて云う。あのなあ、朝の夢の中でうっかり反応してしまったショーツなどは、男心わしづかみなんですよ、朝イチのえっちとか幸せの極致なんですよ、そこんとこよろしくたのみますよ!!
そうお願いしようとするとすると、カミュはなんだか遠い目をして想い出したように云う。
---そういえば、私が氷河とアイザックの夢精をしたトランクスを洗ってやったのも14歳までだったな。あいつらも年頃だ、もう私が洗っては迷惑だろう---。
いやいやいや、相変わらず人の話を聞かない奴だとは良くわかったが、そんな話聞いてないから!っていうか、美少女に生まれ変わった師匠にトランクスを洗われたりしたら、マジでトラウマレベルだから!俺はあいつらの事を心底心配した。
ああ、今のカミュを見てその時のことを想い出したりしないでくれ、特に氷河よ。お前はマザコンだから余計に心配だ。お前達の小宇宙は信じている、大丈夫だ、自信を持て。勃つはずだ。師(しかも美少女。現在肉体年齢18歳)に夢精を見られたり、洗われたことぐらい忘れてしまえ!世の中には、兄ちゃんにパンツを洗われたやつだっているんだ。いや、誰とはいわないが。
おれが妙に熱くなっているあいだに、カミュはだんだんと起床してきたらしく。なんだか覚悟を決めた眼をして「よかろう、そこまでいうなら用意してきたものがある、待っていろ」と言ってシャワーに向かった。何が起こるのだろう。じりじりして待っているとすこしして戻ってきて、俺は驚愕した。
シャワーから出てきたカミュは、奇麗に水滴を拭き取った白い裸体に貂の毛皮だけを身にまとい、オーヴァードウのLe coffret Tentationを静かに捧げる様に持っていた。
そのランジェリーセットの小箱を見た俺はその瞬間キター!と思ったね。なんというか顔文字入りで。
おまえ…こんなものまで俺の為に…!!
フランスの下着メーカーはよくわかってくれている。流石アムールの国。
しかもなぜか鞭までも一緒に手に持って。長く豪華な毛皮を肩にかけたカミュは、高いミュールをこつこつと鳴らし、ゆっくりとこちらに近寄ってきた。貂の毛皮は躯にまとわりつき、そしてふわりと舞い、その中の姿態をちらりと見せつけながら、妙に厳かに言う。「私の知っている蔵書では…」
ごくり、と俺が息をのむと。
「…その蔵書では、恋人の前で、全面鏡の部屋に置かれ。清められた躯の要所要所に儀式の紅が掃かれるのだ。そして、拘束具が嵌められる。だが、ここにはそれを頼める小間使いはいない、お前がやるのだ」
おお、それなら俺にも解るぞ、それはフランスが誇るSMの頂点であり古典である『O譲の物語』だろう。流石だ、アクアエリアスよ。俺も実はSM好きだ。ちなみに澁澤訳が淫糜で良いと思っている、個人的にだが。
だが、この書籍に拠れば、鞭打ちされ調教される恋人の準備は小間使いに託され、男達は食事をしながら、拘束具を止めるフックをかける壁がある居間で、コニャックを楽しみながら恋人の支度をまっている筈で…。ええと、つまりおれの場合。全裸のカミュの化粧をする小間使いが居ないから。
----セルフでSMの準備だと-!?
いやこれは、カミュの肢体に触れるチャンス、これを逃さずしては男がすたる。
「まて、その蔵書なら俺も持っている」そういって、急いで本を持ってきた、思春期になんども読んだフランス語を、読みときながらその通りに行っていった。まず、全面鏡の部屋などないから、長いソファに躯を横たえる。カミュはといえば『さあ、どうにでもしろ!』などと覚悟を決めた風のことばを言いながらも、心臓の脈動のが奔馬のように駆けているのが解る、いや、もう解らない、俺のものかもしれない。
貂の毛皮の上に横たわる生まれたままの肢体は、しなやかにしなり、神々しいほどに柔らかく息づき、肌理細やかな肌に揃った産毛が柔らかくそよいだ。それだけでも俺には刺激的すぎて、白い肌をまともにみられない。
なんでお前はそう極端なのだ。その性格を知ってはいたが。昨日まで触れさせてもくれなかったのにいきなり大胆すぎるだろう、俺の事もちょっとは考えろよ!!男は案外チキンハートなの、きのう初えっちとかでどきどきなの!フランス人刺激的過ぎ!しかも準備だけで何もやらせないなんて、オアズケ酷すぎ!っていうかもうこれはプレイの一環なのだろうか?といろいろぐるぐる脳内で自問自答しながら、参考書籍通りに目元にうっすらと紅を掃いたようなアイシャドー。唇には濃く紅を差す。
そして、乳首と乳暈には薔薇の色を刷毛で掃く。すこしだけブラシの先が触れたその瞬間、カミュの躯がびくりと震え、意識がふわりと浮いたようになった。秘密の小箱の一つ目の引き出しを開くと、繊細なレースのブラジャーが出てきた。しかも透けている。うう、これをつけるのか?直視出来ない。自分の理性はすでに崩壊寸前だった。だが、刷毛でチークをふんわりと掃いた胸の上にブラジャーをうやうやしく着付けていく。
次に黒いウエストニッパーを嵌めていくと、控えめな乳首の先が、黒の下着との対比でレースの下から紅をはらんだ様に主張した。最後の仕上げには下腹部の唇と書いてあるが、もう蕩けそうな表情をして、必死に耐えているカミュにそこまではできなかったし、そんなことをしなくてもその裸体は充分に奇麗だった。次に脇のした、膝下のくぼみ、首筋などにオーデトワレをスプレーすると、たったそれだけの刺激でさえ、逃げようとよじる躯に、こちらだってどうしたらよいかなどもう解らなくなりかけていた。すみませーん。もういいでしょうか?我慢の限界なのですが…。
するとカミュはおもむろに起き上がり、三つ目の引き出しのレースの手錠を出しながら言う。
「さあ、それではお前がこちらをつける番だ」
「は?」
思わず俺はもうひとつの決め台詞をいいそうになったよ。
えーと、ちょっと待って下さい、縛られるのは俺なんですか? 先生すみません、質問はありでしょうか。仏蘭西原作のSM文献から、このプレイはいつの間に、沼正三先生の『家畜人ヤプー』になったのでしょうか?若干参考書籍が混ざっているんじゃないかと思うのですが。だが、もう俺に選択の余地など残っていなかった。
そして、目隠しがかけられた瞬間、視界が無くなった世界の脳裏に先ほどまでの白い姿態が鮮明に浮かび、全てを理解した。なんというサブリミナル効果…!そこまで計算していたかアクエリアスよ。
そして、つまり俺は従順な人間椅子ということか!よいだろう。受けてたとう。
決意した俺は「わかった、手首を縛る前にすこし待ってくれ」と言って、ばさあっ!とバスローブを脱ぎ捨てて全裸になった。その勇姿はOVAにして皆に見せたいほどで、今までの中で最高に格好よく決まったマント捌きだったと思う。だが、マッパに目隠しという風体になってしまったから、モザイクをかけなければならないが。
その上で、カミュが用意した手首のレースのボタンを嵌められると。すぐさまうつぶせにされ、這いつくばった背中に静かに冷たく柔らかい皮膚が座る気配がした。
カミュは、貂の毛皮を除けた冷たい尻で上に乗り、しずかにグラスを傾けウォトカをあおりながら、俺の背中をムチで叩き。きまぐれに鋭い爪で、背中を引っ掻いていく。う…。ちょっとだけ声をあげそうになる。ときに熱いのは蝋燭か、そのあとに垂らされるのはグラスの氷か、俺はまさになすがままだ。だがしあわせの極地なのだ。
ああ、そして生尻の感覚、最高だ!これぞ人間椅子の喜びだ。皆、勘違いをして俺はSだと思っているのが、意外とMなのだ。だいたい技だって非常に慈悲深いではないか。だが、このフル勃起してしまった自分の分身はいったいどうしたらいいのだろう。
『私が上になる』
俺の気持ちを解ってくれたのか、突然そういって、躯をひっくり返された、すこし緊張したような硬い声で言いながら、跨がったカミュの下生えはあたたかく腹を濡らし。いや上にも期待は高まる。目隠しされた俺は、もしもその姿態を下から見上げたら、黒のコルセットにレースのブラジャー、そして紅い髪と白い皮膚のコントラストはさぞかし素晴らしく扇情的な光景だろうと想像する。おそるべし、アイマスク効果。
だが、その後が続かない、俺の尖端が入るだろうと愉しみに待っていてもがなかなか先に進まない。どうやらなにか手間取っているようだった。初めて次の日だ、もしかしたら、少々痛いのかもしれない。それともじらされているのだろうか。
つい「大丈夫か?」と訊ねると。「きにするな」と強気の声が返ってきたが、すぐさま、小さな声で『…やはり、こわいのだ。抱きしめていてくれ』という返事が帰って来る。いったいどういうことなのだろうと思いながら「これじゃあ、お前のことも見えやしないよ?」そういって肩をすくめると、汗だらけの躯を寄せて、目隠しを取ってくれた。
ゆっくり起き上がり、対面して座った。手首は窮屈だが、縛られて閉じたまますっぽりと抱えてみた。睫毛が重なる程に顔を近寄せてみると、さっきまでの女王様然とした態度は消えていて、なんだかちょっとだけ泣きそうな顔をしていた。
カミュは緊張のあまりかなかなか入らなかったようで、苦労した汗が額に滲んでいて、ちいさくふるえる声で云った。
「きのう、こわかったんだ」
「なにが?」
「すごく近寄ってみたら、並んで立っていたときにはそんなに差があると思わなかったお前の筋肉が以前より逞しく思えて、抱えた首筋の太さが、ぜんぜん違って。躯のサイズだって変わっているし。だからなにか、抵抗できないような気がして…お前がそんなことはしないとは、わかっているつもりなのだが」
ほら、とカミュは窮屈な手に手を当てて続ける。--昔はこんなに違わなかった。でも、身体だって手だって思ったよりずっと大きくて、頸筋から廻したわたしの腕も、昔は組めたのに届かなくなってしまって、身体が乗ってきた時には幸せだったけれども、すっぽりと包み込まれるような気がしたけれども、なんだか、急に自分が無力になってしまったようで…。わかってくれ--すまん。
最後のほうはちいさく囁くようなその言葉、うつむき加減のちいさな顎が見えるだけで全部は聞き取れなかったが、そんな切ない顔をして云わないでくれ、俺は信じられない想いで聞いていた。だって最強の黄金位であることには変わりはないのに。
だが、自分に置き換えてすぐにわかった。きのうは、俺だって、勝手は解らないし、細い躯を壊してしまいそうで、凄く繊細な生き物を触るように接するしか無かったんだ。
ふと、さっきのことがおもいだされ、云ってみる。
「…だが、あのスープレックスは効いたぞ」
「ああ、久し振りに寝ぼけてしまった。油断がすぎるぞ」
少し嗤うと、カミュはちょっとだけ泣き笑いしながら応えた。
「思った通りにはいかなかったのだろう?」
「ああ」
「おれもだよ」
「え?」
「安心した?」
「だが、お前が満足したのかと不安で不安で。こんな…体型では、満足できないんじゃないかと」
なにいっているんだ、不安は俺もだ、馬鹿だなあ。それに、最高の身体だ。俺にとっては。
「で?あの下着?」
「ああ、私にはああいう方法しか思いつかなかった」
「あんなにされたら俺の心臓が壊れてしまうよ…素敵すぎて。」
そう耳に囁くと、真っ赤になってしまったカミュに想う。なんだ、お互い同じ事を考えていたのか。俺はもう一度苦笑していった。
「手錠を外してくれないかな、これじゃあ抱きしめる事さえできやしない」
そして俺はおきあがってカミュを腰の上に座らせ、お互いゆっくりとついばむような口づけをした。凝り固まっていた躯が徐々に解けるのを感じてから、座った姿勢のまま、やっと俺自身が、お前の中にゆっくりとしずかに納まった。抱き合ったまま、お互いを感じてただ静かにキスをする。
柔らかく細い躯は以前とは違う物で、だが俺の手の中の魂はおんなじで、きゅうと締まった内腔からぴくりと反応が返ってきて、おれは興奮した。だが、その興奮の度合いに、安心してもいた。違う性になってしまったとしても、お前はお前だ。若木のように筋肉のついた身体も愛していたし、今の柔らかな身体も愛している。関係さえ変わってしまうんじゃないかと思ったのは杞憂だった。俺は昔のお前を失った、お前もたくさんのものを失った。同じ人間に何度も恋をする、たとえ姿がかわっても。
これってすごく贅沢な恋なんじゃないだろうか?
「ね、こんどは、お前に目隠しして、縛ってもいい?」
「懲りない奴だな」
そう笑いながら、静かに口づけた。
あのとき、生きているかのように、宝瓶宮に倒れていたおまえ、冥衣で蘇ったお前、いつでも、どんなことになっても、ずっとすきだったよ。呟きながらもう一度キスをする。あの時の冷たい唇を想い出し、今、感じる熱に切なくて泣きそうになりながら、俺は、吐息ごとすべてをだきしめる。
FIN
2013/6/22(6/24 0時微修正)
※作中ででてくる下着はこちらで御座います。↓のURL
オーヴァドウ「Le coffret Tentation:誘惑の小箱」シリーズ。7つの引き出しにアイテムが入っている下着セットで。ランジェリーから目隠しまでがはいった引き出しです!コメントで教えて頂きました!!流石アムールの国!やるな!といったアイテムです。
興味があるかた、画像こちらです↓
(頭にhをつけてください)
ttp://www.inandout-blog.com/2010/02/la-tentation-vue-par-aubade/contenu-coffret/
ttp://www.mensup.fr/glamour/lingerie/d,41375,coffret-des-7-tentations-aubade.html